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小学校英語を民間でサポートする「J-SHINE」とは?

2011年より全国の公立小学校で5,6年生を対象に、年間35回が必修となった「小学校外国語活動」。さて、この活動の現場には、学級担任やALT(Assistant Language Teacher)のほかにも、民間よりサポート人員が派遣されていることをご存じでしょうか?
児童の個性を十分に理解し、児童一人ひとりが活躍できる方法を熟知している学級担任の存在、子どもたちが異文化というものを肌で感じることができるALTの存在は、それぞれに重要な役割ですが、これに加えて、日本で子どもが外国語を身につける時にはどのような方法が効果的か、日本語を知った上で、児童英語の指導方について専門的に学んだ日本人英語指導者という存在もまた、全国の小学校英語の現場では欠かせない役割となってきています。

J-SHINEとは?
このような小学校現場での日本人英語指導者を育成するNPO法人が「小学校英語指導者認定協議会」(J-SHINE=Japan-Shogakko Instructors of English)です。 J-SHINEは、小学校での英語教育の普及・発展を支援するという趣旨のもと、2003年9月に特定非営利活動法人として内閣府から認証を受けました。
本日は、設立者のひとりでもある松香洋子に、J-SHINE設立のきっかけ、小学校英語の歴史、今後の展望を語ってもらいます!

J-SHINE設立のきっかけ
世界の小学校英語の歴史を振り返ってみると、1959年よりスウェーデンで小学校での英語教育が始まっています。私がオランダのユトレヒト大学で英語教育の研究をしていた1993年には、ほとんどのヨーロッパ諸国では小学校での英語教育がすでに導入されていました。
ヨーロッパで小学校の英語教育が始まる発端となったのは、戦争を繰り返したヨーロッパで、ただひたすらに「二度と戦争をしない世界を作りたい」という市民の思いが結集したからでした。戦争や移民問題で揺れていたヨーロッパにとって、人々の間に根強く残る差別主義をなくすには、お互いを理解するための『外国語教育』こそが、国家として最低限実施すべきことではないか、といった考えが各地で叫ばれ始めたのです。それが政治的な動きとなり、「外国語教育をやっていない国家は世界平和を考えている国とはみなされない」といった認識のもとに小学校での外国語(特に英語)教育はヨーロッパで広く普及していったのです。

ヨーロッパでそのようなことを学んだ私は、日本でも小学校英語に真剣に取り組まなければ、日本は今後ますます世界から孤立してしまうのではないか、という不安を感じました。また同時に、『小学校英語』という可能性に日本の英語教育の未来を懸けてみたいとも思いました。そしてオランダから帰国後、「地域ですすめる子ども外国語学習」を実施していたNPO教育支援協会の設立者でもある吉田博彦氏との出会いもあり、J-SHINEを設立するに至りました。

このように、ひいては世界平和のために必須ではないかと言われてきた『外国語教育』ではありますが、日本では、まだその現実味がないのも事実です。現在では全国規模で外国語(英語)教育に関する活動が行われていますが、予算や運営方法などは各自治体によって様々で、まだまだ活動自体が試行錯誤の段階です。そのような中で、担任の先生の負担をできるだけ軽減し、且つ子どもたちの活動を更に有意義なものにしていくという役割を担っているのが、J-SHINEが育成する日本人英語指導者の存在です。

どのように支援しているのか?
全国の学校現場で、日本人英語指導者が派遣されるにあたって、J-SHINEが原則として掲げている目標には、大きく以下の3つがあります。
1) TT(ティーム・ティーチング)で活動を行う
2) All English(英語だけ)で活動を行う
3) 教え込むのではなく、体験学習を実現させる

ティーム・ティーチングとは、複数の指導者が役割を分担し、協力し合いながら指導計画を立て指導する方式のことで、小学校英語では、日本人英語指導者(JTE)やALTが、担任の先生と協力しながら児童のコミュニケーションのお手本となっていく指導法などが含まれます。
2番目のAll Englishについてですが、これは、指導者が簡単な英語を使って指導していくことで、児童は英語が「コミュニケーションのツール」であることを体感できるというのが目的です。英語で授業をすることによって、教室がコミュニケーションの「実践の場」になることは、とても重要なことです。
最後に小学校では、児童は、国語、算数、理科、社会、図工、音楽、家庭科、そして大好きな体育ももちろん、身体を動かし体験をベースにして様々なことを学習しています。外国語(英語)活動も同じように、小学生の間になるべくたくさん体験しておくことが重要です。この「体験」が、その後中学校ではじまる英語学習の基礎となり、将来世界市民として生きていくための基盤を作ります。

保護者・指導者に向けて、正しい情報を配信していく
今日、インターネット上では、小学校英語に関する話題がますます増えてきており、保護者や指導者の間で、小学校英語に対する興味・関心が高まってきているというのがよく分かります。
「小学校英語」は、いわゆる文法などを学んで筆記試験をするような座学的な学習ではなく、「外国語の音声や表現に慣れ親しむ」、「言語や文化に対して体験的に理解を深める」、「積極的にコミュニケーションを取ろうとする態度の育成を図る」というのが目標となっています。つまり、外国語を用いて、世界のいろんな人とコミュニケーションするための基盤をつくることが活動目標なのですが、これが一般的にはまだまだ理解されていないのではないでしょうか。
そんな中で、小学校で英語が始まったけど我が子は何か準備できることはないのか?と少なからず不安を感じ、情報を探している保護者様も少なくありません。これは、小学校現場の先生方も同様です。そのような保護者様や先生方を支援していくのもJ-SHINEの役割の一つですが、更に皆様の関心・疑問に答えられる情報を、今後より多く発信していくことも課題の一つです。

発展性のある団体に成長
小学校英語の必修化が取りざたされてから、多くの方々が『J-SHINE』で資格を取得されましたが、同時に様々な課題と常に向き合いながらの10年間ではありました。それでも、この10年で『J-SHINE』は団体として、非常に有意義な成長を遂げたのではないかと感じるのも事実です。

現在、団体よりNPO資格が与えられた人は約37,000名にのぼります。
そのうち、学校で200時間以上の教育実績を積み、学校長や教育委員会の推薦を受けた人に与えられる「上級資格」保持者は、約400名います。更に指導者の研修や指導、英語活動の企画、指導プログラムや教材の作成などを行い、小学校での英語活動を支援する目的で設けられた「トレーナー資格」保持者は98名です。更に理事会や事務局、トレーナー検定委員などが揃い、一つの大きな組織となっているのですが、この組織内では常に、積極的に指導者同士がお互いを高め合う流れができています。

具体的な例を挙げると、98名のトレーナー資格保有者が、積極的にその他の資格保持者を指導する流れができています。
意欲のある人(トレーナー資格保持者)を団体が積極的に支援することで、更に多くの優秀な指導者が育つという発展性のあるシステムです。

小学校英語の理念が、広く一般のご家庭や、全国の小学校の現場で理解されるのには、まだ少々時間を要するかもしれません。しかし、実際にJ-SHINEの資格保持者を採用している小学校の英語授業は、保護者の方々や現場の先生方より高い評価をいただいています。このような素晴らしい支援団体がわずか10年で構築され、小学校英語の現場でもJ-SHINEの活動が始まり、徐々にその部分が認知されつつある今、小学校英語の未来は明るいと考えています。

J-SHINEの今後
今後の展望としては、現在37,000人の中にいる98名のトレーナー資格保持者や、約400名の上級資格保持者の人数を、更に増やしていくこと、そしてその素晴らしい指導の力を小学校英語の現場のみならず、日本の児童英語の現場でもっと活用していけるような環境を整えることが必要だと感じています。
J-SHINEの活動というのは、自分が住んでいる地域の小学校での様子を知り、地域を盛り上げる大変やりがいのある活動です。そして、自分が海外で得た知見や、自分が英語学習で得た体験を惜しみなく小学校の現場で、献身的に生かしていこうとする日本人の良さが発揮されている活動です。どうぞ今後とも、ご理解、ご支援をよろしくお願いします。

 

mpi会長、J-SHINE小学校英語指導者認定協議会理事・認定委員 松香洋子

投稿日: 2013年05月07日 13:56

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